1216年、イングランドは第一次男爵戦争として知られる内戦の真っ只中にあった。男爵と呼ばれる反抗的な地主たちがイングランド王ジョンに反対し、彼の代わりにフランス王を立てようとしたのが発端だった。

その結果、フィリップ王の息子であるルイ王子はイングランドに渡り、非公式に「イングランド王」を宣言して侵略を開始することになる。

反乱を起こした男爵たちに支持されたフランスは、最終的には権力獲得に失敗したが、この時期はイングランド王政の将来にとって具体的な脅威となった。

フランスがイングランド沿岸部に侵攻した背景には、アンジュー帝国崩壊の一因となった海外フランス領を失っただけでなく、増税を要求して国内の支持を疎外し、決定的に男爵家の支持を失ったジョン王の悲惨な治世がある。

キング・ジョン

ジョン王はイングランド王ヘンリー2世とその妻アキテーヌ朝のエレノアの末子であり、四男であったため、実質的な土地の相続は期待されず、ジョン・ラックランドというあだ名で呼ばれた。

その後数年間、ジョンは兄から授かった権力を、特にアイルランド領主に任命されたときに失政を犯すことになる。

一方、長兄はリチャード1世となり、中東での活躍からリチャード獅子心王とも呼ばれた。 リチャードが十字軍と海外問題で時間を取られるようになると、ジョンは彼の背後で陰謀を企てるようになった。

やがて、リチャードがオーストリアで捕らえられたという知らせを聞いたジョンの支持者たちはノルマンディーに侵攻し、ジョンはイングランド王を宣言した。 リチャードが帰還できたため、この反乱は結局失敗に終わったが、ジョンは王位継承者としての地位を固め、1199年にリチャードが他界すると、イングランド王になるという究極の夢を達成した。

ジョン1世となったイングランドは、最も近い大陸の隣国フランスと再び紛争を起こすまで、さほど長い時間はかからなかった。

ジョンの軍勢に勝利がなかったわけではなかったが、最終的には大陸の領土を維持するのに苦労し、やがて彼の治世は1204年に北フランス帝国が崩壊する証人となってしまった。

彼の治世の残りの大半は、軍の改革と増税によって失われた領土を取り戻すことに費やされた。

しかし、これは国内の聴衆に悲惨な影響を与えることになり、イングランドに戻った彼は、彼の財政改革の影響を認めない有力な男爵たちによる大反乱に直面することになった。

これらの対立する派閥間の取引を仲介するために、有名なマグナ・カルタが生まれた。マグナ・カルタは、男爵が享受すべき自由を定めるとともに、君主の制限を規定した憲章である。

ジョン王がマグナ・カルタに署名

残念ながら、1215年のマグナ・カルタの問題は、権力分立に関する永続的なコンセンサスを固めるには十分ではなかった。

このような分裂は必然的に内戦へと波及し、正式には第一次男爵戦争と呼ばれ、ロバート・フィッツウォルター率いる地主階級がジョン王に反旗を翻した。

反旗を翻した男爵たちは、目的を達成するためにフランスに目を向け、ルイ公の権力を求めた。

フランス国王フィリップはこのような争いの片隅に留まることを望んでいたが、彼の息子であり将来の国王となるルイ王子は、男爵たちからの英国王位継承の申し出を受け入れた。

1216年、ルイ公は、父とローマ教皇の反対を押し切って、軍を率いてイングランドに向かった。

1216年5月、ルイ王子とその大軍がタネット島に到着し、フランスによるイングランド沿岸への侵攻が始まった。 王子には、装備品や約700隻の船とともに、かなりの軍勢が随行していた。

ルイは、イングランド男爵の盟友の支援を得て、瞬く間にイングランドの大部分を支配し、セント・ポール大聖堂での豪華な行列とともにロンドンに凱旋した。

首都はルイ王子の本拠地となり、住民たちはルイ王子を支持するよう説教を受けた。

ロンドンに到着した彼は、男爵たちによって非公式に "イングランド王 "を宣言され、瞬く間にフランス人君主に対する民衆の支持は、彼の軍事的勝利とともに着実に高まっていった。

ウィンチェスターを占領したルイとその軍は、夏の終わりまでにイングランド王国のおよそ半分を支配下に置いた。

さらに、スコットランド王アレクサンダーは、新しいイングランド王に敬意を表するため、ドーバーに彼を訪ねた。

1216年10月、イングランド東部を遠征中のジョン王が赤痢で死去。

彼の死後、特に不人気だった彼の治世に反旗を翻した男爵たちの多くは、9歳の息子、後のイングランド王ヘンリー3世に支持を向けた。

その結果、ルイの支持者の多くが忠誠を誓い、ジョンの息子の王位継承を支持して選挙戦を離脱した。

1216年10月28日、若きヘンリーが戴冠し、彼の父を非難し中傷してきた反抗的な男爵たちは、新たな王権によって彼らの不満が解消されることを当然のことと考えた。

ルイへの支持は低下しており、ルイが当初得た利益は政権を維持するのに十分ではないことが判明した。

フランスを支持する人々は、ジョン王の失敗を指摘し、またジョンの姪であるカスティーリャのブランシェとの結婚によって、ルイにはイングランド王位に就く正当な権利があると主張した。

しかし、その間に、ヘンリー3世が戴冠したばかりの摂政政府の下で、ルイ王子の支持者の一部が忠誠を見直すよう強要されることを期待して、1216年11月にマグナ・カルタの改訂版が発行された。

しかし、これだけでは戦いは収まらず、翌年も紛争は続き、より決定的な戦いが次のイギリス君主の運命を決めることになる。

多くの男爵がイギリス王室に亡命し、ヘンリーのために戦うことを望んでいたため、ルイ公は大きな課題を抱えていた。

このような出来事はリンカーンでクライマックスを迎え、ペンブローク伯爵のウィリアム・マーシャルという騎士がヘンリーの摂政を務め、500人近い騎士と大軍を集めてリンカーンに進軍した。

1217年5月、ルイとその配下はすでにこの街を占領していたが、リンカーン城はまだヘンリー王に忠誠を誓う守備隊によって守られていた。

結局、マーシャルの攻撃は成功し、リンカーンの戦いは第一次男爵戦争の重要な分岐点として残り、2つの戦争派閥の運命を決定づけた。

マーシャルとその軍隊は遠慮することなく街を略奪し、フランス皇太子ルイを支持してイギリス王室を敵に回した男爵たちを粛清した。

その後数カ月、フランスは英仏海峡を越えて援軍を送り込み、軍事的な主導権を取り戻そうと最後の努力をした。

カスティーリャのブランシュによって急遽編成された艦隊が出航すると、間もなくユベール・ド・バーグ率いるプランタジネット朝のイングランド艦隊が攻撃を開始し、ユースタス・ザ・モンク（傭兵・海賊）率いるフランス軍の旗艦と多くの随伴船の拿捕に成功したため、不運な結末を迎えることになった。

サンドウィッチの戦い（ドーバーの戦いと呼ばれることもある）として知られるこれらの海戦は1217年夏の終わりに起こり、最終的にフランス皇太子と反乱を起こした男爵たちの運命を決定づけた。

残りのフランス艦隊が引き返してカレーに戻る間に、悪名高い海賊ユースタスは捕虜となり、その後処刑された。

このような軍事的打撃の後、ルイ公は譲歩を余儀なくされ、ランベス条約として知られる和平協定を結ぶことに同意した。

1217年9月11日に調印されたランベス条約（別名キングストン条約）は、ルイがイングランドの王位継承権と領土を放棄し、フランスに戻るというものであった。 この条約には、マグナ・カルタを確認するという条項も含まれており、イングランドの政治民主主義の発展にとって重要な出来事であった。

1216年のフランス侵攻がイギリスの歴史に与えた影響は、このような大きなものであった。 条約の調印は内戦の終結をもたらし、フランスの王子は祖国に戻り、マグナ・カルタの再発行の証人ともなった。

ケント州を拠点に活動する歴史好きのフリーライター。

2023年1月16日発行